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第1章 愛を契る

　ーー読み終えてから、泣いていたんだよ。

　私ね、高校の時からすみれちゃんが文化祭で発表した作品や冊子も必ず読んでいたんだ。

　生きた言葉をそのまんま文章にして、読む度にその世界にどっぷりとのめり込んでいた。

　この人の書く文章は凄いって、尊敬もしていたし、憧れてもいたんだよ。

　でもあの頃はお近づきになるチャンスもなければ、声を掛ける勇気もなかった。


　卒業してから、毎日何かをして一日が終わるっていう惰性の生活を送っていた。

　記憶に残るほどの楽しい出来事があったわけでもない。

　大学も私には自由な時間を先延ばしにする手段の為に行っているだけ。

　特別に学びたい事もない。

　毎日が退屈でつまらなくて、生きている事すら億劫に感じた。

　そんな時だよ…
何気なくパソコンを開いて、暇潰しに携帯小説のサイトを開いたんだ。

　陽だまりの猫と名乗るすみれちゃんを見つけられた。

　また、すみれちゃんの物語にのめり込んだ。

　『醜い、ペニス』を読んだ時、すみれちゃんに間違いないって思った。

　こんなに私の胸を揺さぶる作品は、すみれちゃんしか書けないから……

　会いたくなった。

　だから、すみれちゃんを探した。

　教習所で声を掛けたのは偶然なんかじゃないんだよ」