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向日葵
第1章 愛を契る
 天使と悪魔は同時に囁いた。

 一つは、全てを惚けて、早くこの部屋から出て、葉月と距離を持つ事。

 もう一つは、陽だまりの猫だと打ち明けてしまい、そういう風にしか生きれない事を素直に告げる事。

 長い沈黙が二人の間に流れた。


 「すみれちゃん…
私はすみれちゃんほど頭は良くない。
文章を書くのも苦手だわ。
でもね、私の胸に響く文章を書ける人は、この世にたった一人だけ。
ーーすみれちゃんなんだよ!」


 葉月のこの言葉に観念したんだ。

 全てを白状し、楽になってしまおうと…
どんなに一生懸命に書いても落選続きの書き手に対して、この言葉は涙が出るほど嬉しかった。


 フゥと軽い溜息をつき、両手こそは挙げなかったが、降参を意味していた。

 
 「驚いたけど、嬉しかった。
ずっと、書き続けていて良かったと思える瞬間だったよ、葉月ちゃん」


 葉月は私を真っ直ぐ見て、ニッコリと笑った。


 ーー目が合う私達ーー


 「芯のある文だよ。
醜いのは、ペニスを持たずして、彼女を本気で好きになってしまった己の運命を呪い、心も身体も報われない自分の僻みを醜いと表現した」


 「うん」


 「ペニスさえあれば、彼女に自分の想いをちゃんと伝えられたのに…
 例え、振り向いてくれずとも、その愛に正々堂々と挑めたのに、もどかしい自分は天邪鬼となった」


 「そう」

 「何度も何度も読んで泣いていたよ」

 「有難う」

 「主人公のモデルはすみれちゃんかな…って思った」

 「……その通りよ……
あくまでも小説だから、物語を面白くしたくて創作した部分も勿論あるわ。

 でも、その反面、主人公に寄り添って心を描くのが私のやり方。

 私が主人公なら……

ーー叶わぬ想いを抱いて友達を演じてゆくより、一層、跡形もなく破壊してしまいたいと思うはず。
 そして、自分も壊して痛みを心に刻む事を選ぶよ」







  「やっぱりね…
私には分かっていたよ。
すみれちゃんもこっち側なんだって…

 好きよ…
すみれちゃん…
……ずっと、ずっと前から」
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