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第7章 愛と孤独

　「あら、すみれ！すみれじゃない！」
一瞬のうち鳥肌が立つような寒気を感じる声。
声の方向を見ると、あの忌々しい女豹が立っていた。


　「あっ、やっぱり！
偶然ね！私も主人が遅くなるっていうから、ここに夕食を食べに来たのよ」

　偶然じゃないでしょ！
偶然を装って、何を企んでる？
まさか……会社からずっと見張っていた？


　「あらそうなの？
でも、ここはあんまり良くないわよ。
タバコ吸う人も居るし、分煙になってないもの。
体に触るわ」

　「大丈夫よぉー
だって、こういう所で好きなもの食べたいじゃん！
子供生まれたら来れなくなるし…」

　「それもそうだけど、妊婦なら食事を摂る場所も選んだ方がいいわ」

　「あっ、ごめんなさいね。お邪魔だったのかしら？」　　

　邪魔だよ！邪魔！　
お前の存在自体が邪魔！

　「別にそういう意味じゃないわ！
こちら、会社でお世話になっている白石チーフよ」

　「そうなの？
白石さん、はじめましてー
秋津梨花と申します。
すみれとは高校の時、塾が同じで仲良くしていてー
ダブルデートもした事あるんですよ！」

　「へぇー
あっ、白石智と申します。
はじめまして」

　「二人がいい雰囲気だったから、声掛けるの躊躇したわ。
すみれは相変わらずモテるなぁーって」

　なら、声掛けてくんなよ！

　「チーフと仕事終わりの一杯をしていただけよ」
　
　「へぇーそうなの？
ねぇ、仕事は楽しい？
タウン誌作ってるんだよね。
バリバリ働くキャリアウーマンって感じでカッコイイよね。
私にはそういう才能ないから、結婚して専業主婦にしてくれた旦那様に感謝だわ」

　人を上げておきながらノロケかよ？
足りない女だよ。全く！


　「あの、良かったら、秋津さんもご一緒しませんか？
立ち話もなんだし……」


　「えっ！いいんですか？
うわぁ、嬉しい！
是非、お願いしまーす！」

　はしゃいだ顔の梨花はさっさと私の隣に座り、図々しくも店員を呼び、グレープフルーツジュースを頼んだ。


　本当に邪魔！