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続「辿り着く 先には」
第1章 『絶対』
目が覚めた時は、必ず聖に抱き締められていた。香りがするので分かるのだ。何の香りだろうと、暫く考えていたが、この部屋に来て漸くそれが何かが分かった。甘く、とろけるようなその香りはバニラエッセンスに似ていた。

ぼんやりした意識の中に、女の子ならきっとみんな好きな香りなんだろうなとそう思った。起こさないように横顔を見つめる。そんな感情を考えながらも、やっぱり自分は素直になれない女なのだろうと思っていた。

甘いものがそもそも、苦手だった。チョコレートは得に駄目だった。だからといってお菓子を作ったりしなかったわけではない。一通りバレンタインのイベントには乗っかってみたり。なのでバニラエッセンスの香りを思い出すのに時間が掛かったのは、最近の忙しさで、お菓子を作ったりする時間もなかったからだろう。

昔から香り、匂いには凄い敏感であった。男性の香りを意識したことなどはあまり無かったが、こんなにまでも常に近い距離にいられると流石に気になることは確かだった。女の人達がきっと、沢山この香りを嗅いだのだろうと思うと胸焼けがしてしまう気がして少し苦笑してしまった。

腕が痺れていないか心配で、少し体を動かしてしまったら抱き寄せられてしまった。

「ごめんなさい、起こした?」
「いや、どちらにせよ起きる時間やろ。今日は漸く休みやし、見せてやりたいとこも会ったから。」
「琵琶湖、行きたい!日本一の湖、大きい?もちろん。綺麗でしょうね、天気もいいし。」
「それから、醍醐寺も。春なら美しい垂れ桜を見せてやれたんやけど。花が好きやろ、昨日は絢音が美しい花やったけど。」

それに驚いた目をして固まる、瞳が美しくて吸い込まれそうだった。困った顔をしながらそれに答える。

「いつも、思ってたんだけど。本当にその歯の浮くような台詞をさらりと言えるわよね、聖って。」
「ほんまのことを言ってるだけやけど、普通の女は此処で喜ぶんやけど。」それに、体を少し離して笑った絢音。
「普通がどんなかは分からないけど、私はそんなのは恥ずかしいだけ。言われたこと無いもの。」
「絢音は、ほんまに綺麗やよ。美人さんやもんな。」
「もう、いいわ、くすぐったくなるから。ありがとうって言うとこ?ふ・つ・うの反応は?」それに笑いながらまた、抱き寄せた聖。
「ほんま、おもろいわ。飽きへんなぁ~。」

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