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明治鬼恋慕
第9章 紅粉屋
さっさと逃げるか
大人しく捕まって、事情を説明するか。
同じように迷っているらしいリュウだったが、すぐに心を決めて屋根から下りてきた。
隣に飛び下りたリュウに、焔来が耳打つ。
「…いいのか?」
「ここで逃げたとして、警吏や憲兵を呼ばれたら事がややこしくなるからね」
リュウはいつものように冷静で、心配する焔来に小声で言葉を返す。
そして両手を上げながら男たちに向かって弁解を始めた。
「勝手に立ち入ったことをお詫びします。しかし僕たちは盗人ではありません」
「何を言うか。とにかく付いて来い。言い訳はそこで聞いてやる」
「……はい」
だが取り合ってもらえない。
二人は互いに目配せした後、急き立てられる形で裏庭へと連れていかれた。