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明治鬼恋慕
第10章 狂骸湯
「旦那様…」
その時、主屋の土間から現れたのは下働きの男。
先ほど又左衛門に何やら指示をされていた男は、両手で盆( ボン )を運んできた。
盆の上には、白地に葵模様の磁器がのっている。
男は又左衛門のもとへ歩き、その器を差し出した。
「馬鹿者が…。私に渡してどうするつもりだ」
「も…っ、申し訳ありません」
「──それを、あの者に献上しろ」
「はい…」
又左衛門は器を受け取らずに顎を使って焔来を指し示した。
咎められた男は背を丸め、いそいそと焔来へ近付いてくる。
「……!?」
そのまま器は焔来に差し出され、中身を確認した焔来は眉を潜めた。
器の中には、乳白色の液体が注がれている…。
何だこれは?
「飲むがいい。──…狂骸湯だ」
「…なんだ、…それは」
名を言われても焔来は知らない。