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明治鬼恋慕
第2章 落方村
やっと会えたね──。
少年の唇が無音でそれを告げ、限界に達したのか…伸ばした手から力を失い意識を手放した。
同時に、呼吸を忘れるほど驚いていた焔来も、硬直状態から我に返った。
「…ハァ…っ」
深く息を吸う。
「お前も…──鬼、なの、か…!?」
文久四年。旧暦の六月。
暮れかけというのに強い日射し──夏を感じるあの季節に、お前は橋の上で倒れていた。
思えば出会いの瞬間から、お前の身体には血の匂いがたっぷりと染み付いていた。
なのに、お前は笑うんだよ。
こんな傷、気にしないって。自分の目には、俺しか映っていないんだって。
俺の事しか頭にないって…笑うんだ。
───…