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明治鬼恋慕
第2章 落方村
焔来は跳ね返るように立ち止まった。
急に止まったせいで身体の均衡を崩し、尻もちをついて転ける。
その間も…目は少年から背けられない。
そして相手もまた、目の前で無様に転げた焔来の姿を焼き付けるかのように凝視していた。
「…ハァ‥ッ‥…ハァ…──きみ…は…」
「──…!?」
女人のような高い声。
透き通った──川のせせらぎ。
切れた唇を、明け方の三日月のような形にして…彼は弱々しく微笑んだ。
「…ッ‥ハハ…、なん だ‥‥仲間じゃ…ないか…」
薄茶の瞳を囲む、緑っぽい虹彩が、潤んでいる。
自らの血がこびり付いた手を伸ばし、彼は焔来に手招いた。
“ こいつ、同じだ…… ”
しかし焔来は動けない。
“ 俺と同じだ ”
何を見て気付いたわけでもない。
ただ、二人は互いに直感したのだ。