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明治鬼恋慕
第12章 陰間茶屋

リュウが茶屋に閉じこめられてから、絶えず焚かれていた香( コウ )の煙──。
それは嗅いだものを性的に興奮させる作用を持ち、本来ならば、行為の前の遊女がたしなむ。
過剰な量を吸わされたリュウの身体は…発情するほかないのである
「僕はこのざまだ…ッ……焔来、先に、逃げて」
リュウの意思など関係なく、強制的に──。
「…憲兵が…もどる前に、門から外へ─…ッ 出るんだ。…ハァ、ハァっ……!! …そう…、したら」
「…っ、追いて行けるわけない」
「いいや、行くんだ……!! いいかい? 門を出て、北東の…道を……っ、街の、ハァ、外に……」
「……っ」
リュウは焔来へ逃げろと告げた。
そんな事を言っても、彼が首を縦に振るわけがない。
それはもちろん知っている。
だが…それしか道がない。
“ こんな時に焔来の足を引っ張るなんて…… ”
有り得ない。許せない。
こんな自分なら──イラナイ
焔来を守れない弱い自分なんて、いらない。
──ダン!!
「ッ──…!? …っ、ほむ、ら?」
リュウの顔の真横
突然 焔来が、塀に荒々しく手を突いた。

