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明治鬼恋慕
第3章 擬態

年に一度行われる落方村( オボカタムラ )の恒例行事。
この日だけはどの百姓も仕事を早めに切り上げて、名主の家に集まってくる。
それは木刀を使った、男と男の一本勝負だ。
「優勝は今年もリュウか!」
「焔来もあと少しってとこで惜しかったけどな」
先の七夕祭に行われたのが子供の部。
そしてたった今終わったのが成人の部である。
普段の畑仕事で培われた力を発揮しようと、大の男たちがこぞって参加するこの行事で…
「…つっても、あんな若いモンに勝てねぇとは村の男たちも情けないねぇ」
優勝を争ったのは、去年に引き続き、まだ十八歳の少年だった。
不服そうな面々が庭の隅であぐらをかき、ばつが悪そうに背を丸くしている。

