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明治鬼恋慕
第3章 擬態

しかし敗者の大人たちにわざわざ気を配る者はひとりもいない。
「強いなリュウ!」
「リュウ~!」
見物人は男女問わず、凛と佇む勝者の少年に夢中だった。
年頃の娘たちは特にだ。
焔来を見下ろして立つ細身の少年──リュウは、役目を果たした木刀を捨てて汗をぬぐう。
くせのない面差しを引き立てる涼しげな目を、周囲ではなく焔来だけに向けて──
「お疲れ様」
倒れている彼に手を差し出した。
「あのなぁ、俺だって悔しいんだぞ?」
「うん」
「負けた奴に情けをかけるなっての…ったく」
差し出された手を掴みながら焔来は唇を尖らせた。
事実、リュウのこの行為が敗者を逆撫でしてしまうこともあるだろう。
それでも二人が笑っているのは…彼等の仲の良さの表れだった。

