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明治鬼恋慕
第13章 迎撃
「僕はそれだけで十分なんだ」
焔来の視線の先に気付いたのか、リュウは自らの腹部に手を当てて、べとりと付いた赤いそれに目を細める。
かと思えば傷を嘲笑うように鼻から息をはいて、そっと手を下ろした。
「──…だから、隠し事なんて気にしないよ。言いにくいことなら無理して言わなくても構わない」
「でも…っ」
「僕は焔来を困らせたいわけじゃないから、さ」
「……」
どうしてリュウは、こんなに優しい顔で微笑んでくれるのだろう。
何かが、オカシイ。
血溜まりの惨状を背景に、その美しい笑みは焔来から見て違和感しかなかった──。
「焔来…」
小声で名を紡いでから…重ねられた唇も
着物の合わせに滑り込み、肌をゆっくりと撫でてくる手も。
不安、焦り
“ どうして震えるんだ…… ”
絡められる舌でさえ、孤独にすがりつくような触れ方だった。
──…