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明治鬼恋慕
第13章 迎撃
「指切りは──遊廓の女が男への身の証に贈った小指。拳万( ゲンマン )は、拳で一万回殴るということだよね」
「……!」
「…あとは…針を千本、呑ます、だったかな? なんだか物騒なおまじないだと驚いたよ。でもさ」
リュウが焔来に歩み寄る。
彼の履く草鞋( ワラジ)が雪を踏みしめ、ざくざくと音が鳴る。
「僕は、…震えるほど嬉しかった」
そう言う今のリュウも僅かにだが震えていた。
その震えはこの寒さのせいだけではないように思える…。
「僕を裏切らないと約束してくれた君が、たまらなく愛おしかった」
「…あ…そう、なのか」
「うん」
リュウは焔来の目の前まできていた。
焔来が目線をさげると、リュウの白い着物に、血シミが広がっていくのが見えた。
治りかけていた腹の刺し傷が、激しく動いたせいで悪化している──。
そのせいなのか。リュウの瞳に力が無いのは…。