この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
明治鬼恋慕
第14章 決別
この世界に意味なんてなかった──生きるのも、死ぬのにも。
それは、焔来に出会うまで。
仲間に巡り会うまで。
「この話は終わりにしようよ」
小屋の奥の古びた化粧箪笥( タンス )から手ぬぐいを見付けて、会話に終止符をうったリュウは傷口の血をそれで押さえた。
それから二人は食料を探し、少しの押し麦を発見する。
釜戸はないが土釜があったので、それを角火鉢の上にのせて麦を炊いた。
炊けた麦飯を腹におさめ
箪笥から夜着を引き出した二人は、それを掛け布団にして、むしろの上に身を横たえた。
「おやすみ、焔来」
「ああ、おやすみ」
落方村を出てから野宿続きであった彼等にとって、これは束の間の安息だった。
いつぶりかわからない布団の温もり。
スー、スー…
「──…」
目を閉じた二人が深い眠りに落ちるまで…
灯りの途絶えたらんぷの熱が、冷める時間もなかっただろう。