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明治鬼恋慕
第14章 決別
この傷は違う──
「これは自分で付けたんだ」
「は? 自分で…?」
「僕が切ったんだ。短刀を使って」
「…!! どういう、ことだよ…」
「フフ…、さぁ」
いったいどういうことなんだろうね?
困惑する焔来の反応は予想通りで、リュウは悪戯めいた笑みを浮かべた。
火の勢いが安定するのを見届けて、そっと付け木を置く。
「あの時の僕は、生きている理由が見当たらないことに気付いて」
「……っ」
「──…でも死ぬ理由もとくに無かったから、浅めに切ったところで手を止めたけれどね」
ヘソの下に横に伸びる、遠き過去の傷痕。
何故か消えないその痕は、これまでのリュウの生きざまを皮肉を込めて物語る。