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明治鬼恋慕
第14章 決別
それは、あの日に二人が見た
一面に広がる曼珠沙華( マンジュシャゲ )。
紅く、紅く…
彼の怒りを映し出して、燃えているような。
「駄目だリュウ! 俺はっ」
「悪いのは焔来だよ」
今さら…喉がちぎれるほど叫んだところで意味はない。
リュウは銃を構え直した。
スッ──
それはちょうど銃口が、リュウの胸に向けられた形に。
片手で銃筒を支え、他方の指を引き金に添えて
そして──自らの心臓を狙ったそれが火を噴いた。
「やめろおお!!」
焔来が呆然と見守る前で
リュウの身体が倒れ、憲兵の死骸に重なる。
その光景に焔来の目から涙が流れた。
力の抜けた膝が崩れる。
同時に地鳴りがしたかと思うと、焔来の足場が揺れ、雪崩が起こった。
仰向けに倒れたリュウを凝視する焔来は
そのまま
雪崩の勢いに呑まれ、一歩も動けずに山の斜面を流されてしまった──。
───…