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明治鬼恋慕
第15章 理由
───…
山の天気は再び荒れる──。
木々は白い吹雪にその姿を隠され、細かな枝はたおられていた。
地滑りによって横倒しにされた樹木の幹も、新たな雪が覆っていく。
「…ハァっ…ッ──ハァ…」
雪崩に巻き込まれてから、暫く気を失っていた焔来。
彼がこうして凍死を免れて歩いているのは奇跡としか言いようがない。
負傷した片足をずるずると引きずり…
焔来は行くあてもなく歩き続ける。
自分がいったいどこにいるのかわからないのだから、その足取りが重たいのは当然のことであった。