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明治鬼恋慕
第15章 理由
山を降りて、大人しく憲兵に捕まるか?
あいつらにとって鬼狩りは見せしめだ。捕らえられた日には、どんなに痛め付けられるかわかったものじゃない。
でもそれが俺には相応しい。
“ ならなんで登ってるんだ……俺は ”
降りろよ。
此方じゃないだろう。
山を登って、この先に何があるって言うんだ。
雪崩に呑まれる前の──あの場所へ、のこのこ戻るつもりなのか?
「ッ──……ハ」
戻ってどうするつもりだよ。
あそこには人間の死骸と
リュウの身体が、倒れているだけ…。
ガン..っ
「………痛ぇ…」
前を見ていなかった焔来。
立ちふさがった樹木に額をぶつけて、憎々しく呟く。
「痛ぇじゃねえかよ……っ」
枯れてしまえ。みんな、死んでしまえ。
焔来の呟きに反応したかのように、ぶつかった部分から黒い樹皮が剥がれ落ちた。