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明治鬼恋慕
第5章 出立
──
薄暗くなった空のもと、二人は無言で家に戻った。
土間を横切り床に腰かけた焔来の後ろで、部屋に上がったリュウが自分の荷物をあさる。
「…どうする気なんだ」
「無論、村を出るよ」
間を必要としない返事。
当たり前の行動をリュウが告げた。
「鬼狩りの話は本当なのか?」
「確かな情報だよ」
「明治セイフってのは…そいつらの狙いは何なんだ」
正直なところ焔来は国の情勢について無知である。
それは彼だけでなくて村に住む者のほとんどが、やれ維新や攘夷だと騒がれたところで、その意味を理解していない。
幕府、明治政府……
国の内情にここまで詳しいのはこの村でリュウくらいだろう。