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明治鬼恋慕
第2章 落方村
浦賀の港に黒船が現れてから早、十年。
時は幕末──二百年と国の権力を掌握してきた江戸幕府が、急速に崩壊への道をたどっていた時代。
ある者は国の危機だと刀をふるい
何も知らぬ者はただ怯え、混乱の中に身を置くしかない。
「焔来(ホムラ)ー! どこへ言ったのー?」
「…っ…千代様が俺を探してる。おい! さっさと隠れろ」
そんな動乱の時代でありながら、武士同士のいざこざとは無縁の呑気な村がここにあった。
ここは姫路藩が治める播磨国。
城下町を遠く北にのぞむ、落方村( オボカタムラ )だ。