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明治鬼恋慕
第2章 落方村
家屋の裏に座り込み、なにやらこそこそと怪しい動きを見せる少年──焔来( ホムラ )は、表で呼ばれた自分の名前にぎょっとする。
そこで密かに戯れていた " 相手 " に、慌てて隠れるように促していた。
「早くしろって」
「みっけ! ここにいたのね」
「…ッ」
しかしそんな彼の上に影がさす。
諦めた顔で焔来が背後に振り返ると、そこに立つ少女の足と、赤い花緒( ハナオ )が洒落た草履がふたつ。
「…?…誰かと話してた?」
背を向けたまま視線を上げれば、表通りの喧騒をしょって立つ彼女の目が、興味を持ってこちらに向いていた。
「……いいえ」
「嘘だぁ、話してたよ。どうして隠すの?」
誤魔化すのは…無理なようだ。
焔来はしぶしぶ、床下に隠したそれを彼女に紹介した。