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明治鬼恋慕
第5章 出立
“ オニ、って…なんだろう ”
リュウが告げた事実を受け止められず、千代は何度も頭の中で繰り返していた。
帰路をゆく彼女の身体は重たくて…その表情もすっかり暗い。
“ 鬼って、あの……恐ろしい生き物? ”
そんな
そんなわけがない。
きっと自分が知らないオニなのだと、そんなくだらない妄言を信じたいと願う。
だって本当に…焔来が鬼なら
自分はずっと騙されていたことになる。
それはあまりに辛すぎた。
「焔来が……鬼」
鬼──其れは、人を喰らう化け物。
「…そんな…ッッ…」
忌まわしき名を呟いた千代の身体が恐怖で震えた。