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明治鬼恋慕
第5章 出立
鬼とは古来よりこの国に棲みつく恐ろしい生き物。
類い希な美貌で人間を惑わし、…魅了された哀れな犠牲者は生きたまま喰われてしまうのだと聞く。
“ 焔来はわたしを食べるつもりだったの…!? ”
信じたくない。
彼にとって…自分がただの餌でしかなかったなんて残酷な事実だ。
“ 焔来……焔来…… ”
千代は胸の中で彼を叫び続けた。
七年前…自分が見付けた、行き倒れの男の子。
初めて見た時は彼のあまりに綺麗な顔に女の自分が目を奪われた。
着物は泥だらけだったけれど…お腹を空かせてやつれていたけれど…
こちらに向けられた大きな黒色の瞳に釘付けになった。
一瞬で心も奪われた。
まだ幼かった自分は…あの瞬間に恋に落ちた。