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明治鬼恋慕
第5章 出立
───…
空がうっすらと白み始めた。
暁の爽やかな薄明かりが消えゆく星を覆いながら広がっていく。
まだヒヤリとした空気が風に乗り、山の葉を落としていく。
そんな夜明けに
小麦色の棚畑の上から、落方村を眼下に構える二人の少年がいた。
「──…」
落方村は普段の朝より騒がしく
手に手に武器である農具を持った男たちが、ひとつのあばら家を取り囲んでいた。
「…広まるの、早いな」
「落ちこむかい?」
「裏切ったのは俺だよ」
ものけの空の家に気付いて、村人のざわめきが大きくなったように感じた。
そんな光景を思量に加えたとしても、自然に囲まれたこの村はやはり見るに美しかった。