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明治鬼恋慕
第5章 出立
「行こうか──焔来。
ここは僕らの故郷でも何でもない」
そんなもの、何処にもありはしないけれど
「よし、行くか」
「行こう」
「あてはあるのか?」
「…特に、無いね」
「大丈夫かよそれ」
「…ハハっ、…大丈夫じゃないかもね…」
他人事のように笑ったリュウの後ろ姿を、呆れ顔で焔来が追う。
山肌を飾っていた一面の紅葉はすっかり色を失ったが、それでも行く先は鮮やかだった。
集落の喧騒を背後に、二人は落方村を去る。
たどり着く地はどこでも良かった。
生き残るためなら──どこへでも。
───…