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明治鬼恋慕
第6章 山越え
リュウの隣まで来た焔来は彼の手元を覗きこんだ。
だが何をしているのかわからない。
表皮をちぎらないように残しながら指先ほどの長さに茎を折り、反対側にも同じように折り…。ポキポキと器用に作業を進めている。
「花冠でも作るのか?」
「…ふふ、さぁ、どうでしょう」
「…っ…教えない気かよっ」
「もう少しでできるさ」
リュウの手の中で、曼珠沙華の茎が徐々に二股に別れていく。
…いったいどういう仕組みだろう。
数珠繋ぎの細い紐へと変身したのだ。
「座って、焔来」
「ん? お、おう…」
完成したそれを、リュウは焔来の首にさげた。
それに合わせて焔来の目の下がほんのりと赤くなる。
「──…首飾り、か」
「そうだよ」
「…お前…っ、なんか女みたいだな」
「──焔来こそまるで人間みたいな言い方だね」
照れ隠しに言った言葉に、リュウは皮肉めいた返しをした。
だが、とくに機嫌を悪くした様子はない。
リュウは早くも次の一本を手折り自分のぶんを作り始めている。