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明治鬼恋慕
第6章 山越え
リュウはそういう奴だ。変わった奴なんだ。
焔来はそれをすでに知っていた。
だが、それでも……
「焔来もおいでよ」
柔らかく目を細めて花を愛でる、そんな彼を見ているとやはり勘違いしてしまいそうだ。
こうしているリュウは無邪気で可愛い。
綺麗な顔が俺を向いて、懐っこく笑うんだ。
“ あの顔で喧嘩が強いとか反則だよな ”
複雑な焔来の心境などつゆ知らず、リュウは手折った花を逆さに持って何やら細工をし始めた。
「何してんだ?」
「ん……ちょっとね」
焔来が遠くから聞いても言葉をにごしてくる。
気になったので彼も花の中に踏み込んだ。
普通の花のような甘ったるい香りはなく──
独特の緑っぽい匂いが辺りに漂い、焔来の鼻に滑り込む。