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女子大生 水野果歩
第182章 女子大生 水野果歩(182)
智恵 「ほら、もうすぐお父さんも帰ってくるし、お母さんご飯の仕度するからね。ほら、男の子がいつまでも泣いてちゃいけないわ、ね?康介元気になれる?」
智恵はそう言ってポケットからハンカチを取り出し、康介の涙と鼻水でグシャグシャになった顔を拭いた。
康介 「・・・・うん。」
智恵 「よしよし!じゃあ洗面台で手と顔を洗って来なさい。フフッ、今日のご飯、お父さんと康介のためにお母さん頑張ってるんだから。」
康介 「うん!」
すっかり元気を取り戻した康介が笑顔でそう答えると、智恵も笑顔で康介とハイタッチしてからソファから立ち上がってキッチンへと向う。
顔を洗った康介はリビングで絵本を読んで、夜ご飯ができるのと父親が帰ってくるのを待っていた。
智恵 「あ~もう!また焦げちゃった・・・うーん今度は上手くいったと思ったのに・・・あ!こっちの鍋も!・・・はぁ・・・」
時折聞えてくる苦手な料理に悪戦苦闘する智恵の声に、今度は康介が智恵の方を心配そうに見つめている。
智恵 「大丈夫よ康介!ちゃんと3人分は栄養のあるものできるから!」
康介 「うん、頑張ってお母さん。」
康介は料理をする母の後姿を見るのが大好きだった。
幼稚園で友達と遊んでいる時間よりも、こうやって母と過ごす時間の方が何倍も楽しい。
なんとか出来上がった料理達を食卓に並べながら、智恵と康介は父・敏雄の帰りを待っていた。
康介 「お父さん、遅いね。」
智恵 「ぇ?・・・うん・・・そうね、お父さんお仕事忙しいから。」
そう俯き加減で呟く智恵の表情が、その時の康介にはなんだか元気がないように見えていた。
子供というのはいつも大人の顔色を観察するように見つめているものだ。
その時も子供ながらに康介は感じていたのだ、毎日父親の帰りを待っている時にだけ、智恵の表情が暗くなる事を。