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女子大生 水野果歩
第184章 女子大生 水野果歩(184)
無機質なキッチンを眺めている富田の頭の中に、再び母・智恵の姿が思い浮かぶ。
夕飯の仕度をする母の後姿、決して得意とは言えない料理を一生懸命作る母の姿。
そして、出しの効いてない味噌汁。
あの出しの効いていない味噌汁が、富田にとって一番記憶に残っている味なのかもしれない。
富田 「・・・・・・」
と、母・智恵の味噌汁を思い出した瞬間、同時に富田の頭の中に別の記憶が蘇る。
果歩 『・・・ごめんなさい・・・キッチン勝手に使っちゃって・・・』
富田 『何か、作ってるのか?』
果歩 『えっと・・・あの・・・味噌汁を・・・』
果歩 『ァ・・・・あの・・・秋絵先輩みたいに・・・上手じゃないですけど・・・。』
果歩 『・・・・どう・・・ですか?』
富田 『・・・・これ、だし入れたか?』
果歩 『え・・・?だし・・・?・・・あっ!・・・そっか・・・だし・・・』
果歩 『はぁ・・・ごめんなさい・・・美味しくないですよね・・・』
いつか身体を重ねた次の日の朝に、果歩が出し無しの味噌汁を作った事を思い出した富田。
あの時、果歩は何を思って自分にあんな事をしたのだろうか。
そしてあの時、自分は果歩に対してどんな感情を抱いていたのだろうか。
富田 「・・・・・・。」
・・・俺は・・・安心・・・していたのか・・・?
・・・俺は・・・
母・智恵の優しい笑顔と、母が居なくなった日の感情、そして果歩の顔が、まるでフラッシュバックの様に富田の頭の中を何度も何度も駆け巡る。
グルグルグルグル・・・重い記憶が目が回る程のスピードで富田の感情を混乱させた。
富田 「ハァ・・・ハァ・・・・・母さん・・・果歩・・・ああ・・・」
両手で頭を抱えてその場に蹲る富田。
それは誰にも見せた事のない、富田のなんとも弱々しい姿だった。