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鮮やかな青
第5章 月の影
「わたし、もっとたくさん勉強します。早く大人になって、景さまに負けないくらい強くなります。ですから……その」
ともは声を小さくして、言いよどむ。私が首を傾げれば、ともはうつむき私から目を逸らしながら呟いた。
「後ろは気にしないで、めいっぱい戦って……帰ってきてください」
「うん、ありがとう。ともも皆もいるし、思い切り戦ってくるよ」
するとともは顔を上げ、僅かだが眉間に皺を寄せる。
「とも?」
「景さまは、やっぱり鈍いです」
「え?」
ともは自ら私の手から離れると、一人で歩き出す。どういう意味かと問いかけても、ともは結局教えてくれなかった。
静かに流れていても、確実に時は進んでいる。陶に対する不信は広がっているが、まだ決定打は放たれていない。
そして時は、思わぬところで新たな変化を生み出す。それが知らされたのは、その年の暮れが近付き、そろそろ新年に向けて準備を始めなければならない頃。兄から届いた書状に、記されていた。
「――」
私はそれを目にした時、胸に憎悪を抱いた。何の罪も非もない、まっさらな人間を憎いと思うのは、おそらくは生まれて初めての事だった。