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鮮やかな青
第2章 歪んだ性癖
小早川とは、今や風前の灯火である一族だった。当主が逝去し、幼い世継ぎも病に倒れ、大黒柱を失った状態である。いかに体制が整っていても、主がなければ家は崩壊する。稀に当主が不在のまま支えた例もあるが、小早川家はその例には入らなかったようだった。
小早川家が私に家督を譲るという事は、即ち身売りと同じである。家という体制を崩さない代わりに、家から生まれる利を差し出す。無論、これを反対し私を拒否する者も、存在していた。
それを黙らせたのが、父・元就と主家の大内義隆だった。私が当主となるにあたって、小早川家には多くの血が流れている。当主などと言っても、向こうの人間からは恨まれても仕方のない立場だった。
私の婚姻は、決して祝福されたものではない。それを心掛けなければ、小早川家へ入ろうとすぐに排除されるだろう。
「さて隆景、お主はどうするつもりだ?」
私の前で扇子を扇ぐのは、昨日約束した陶ではない。今はまだ陶の主君である、大内義隆だった。
「嫁を黙らせるなら、お前のもので泣くまで貫いてやればいい。が、下の者はそう上手くはいかんぞ」