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鮮やかな青
第1章 兄の存在
顔を合わせても、向こうからお辞儀をしてこなければ身内だと気付かないような兄の存在を、まさかこんな場所で痛烈に感じるとは思っていなかった。
明かりを消しても、微かに残る灯台の油の匂い。けれどそれは我が家の夜の匂いより、大分薄い。油一つにも、財力の差があるのだろうか。
否、匂いなど、私はとうに分からなくなっている。私を布団の上で四つん這いにして、体中を舐め回す男の唾液の匂いが、纏わりついていた。
「おや、こんな所に黒子が……ふふ、これも兄にそっくりだの。そういえばあれも、ここに黒子があった。ああ、懐かしい……」
背中のちょうど中ほど、やや右寄りの場所を強く吸われ、私はびくりと体を跳ねさせる。そんな所に黒子があるかどうかなど、私自身知った事ではない。おそらく兄も、自分自身のそこに黒子があるなどとは知らないだろう。
だが、私を貪るこの男は知っている。つまりそれは、この男が、兄を犯したという事だ。そして今私は、かつての兄と同じように、この男――我が毛利家が仕える主、大内義隆によって犯されようとしていた。