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鮮やかな青
第3章 兄の手
「そもそも、お前がせっかく実家に戻っても、すぐに帰ると言うから屋敷を作ろうとしているのに! どうして我を通すばかりで、人と話そうとしないんだ」
「私には小早川の家があるのですから、そう長居は出来ないでしょう。兄様まで、父様のような我が儘を言わないでください!」
少し煽るつもりが、兄は突然口を閉ざすと広げた見取り図をくしゃくしゃに掴み取る。
「……分かった、もういい。邪魔して悪かった」
「分かった、って、何が……」
やりすぎた、と気付いた時、兄は既に立ち上がっていた。私の声も無視してそのまま部屋の外へと出て行き、ぴしゃりと襖を閉める。喧嘩していた手前、すぐに追いかける事もためらわれた。
だいたい、追いかけたとして何を話すのか。ごめんなさいと謝れば、兄はおそらく私を許すだろう。だが、私の胸にはさらなる我が儘が渦巻いていた。
どうして兄は、拳骨を食らわせてでも私を説き伏せてくれないのか。父のようにとまでは言わないが、もう少し粘っても構わないのに。
論ずる価値もないと言わんばかりの拒絶に、また私は子ども扱いを覚える。理不尽な憤りは、結局私を石にした。