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鮮やかな青
第4章 激動の年
新年の宴は、主君にとって腕の見せ所である。たかが宴と馬鹿にしてはならない、慰労もろくに出来ないような気の利かない主は、いずれ下から見限られるのだ。なるべく豪勢に、しかし無駄な金は使わず、皆に楽しんでもらわなければならない。
小早川の人間は、どんなものを好み喜ぶのか。一応私も、幼い頃から小早川には馴染みがある。とはいえ、情報を集めておくに越したことはない。流石にこの時期は忙しく、欲に耽る暇はなかった。
「では、乃美殿はこちらが良いと思われますか」
「どちらの案も皆喜ぶとは思いますが、やはり最後は舌が慣れたものを食するのが一番でしょう。変えるとすれば、酒だと思います」
情報を得るにしても、誰に頼るかは重要である。私の足元を掬おうと企む恐れがなく、気軽に相談出来る人間として、私はそこそこ年も近く、これからの戦でも活躍を期待出来る乃美宗勝殿を頼る事にした。
「いい職人の目星はついていますか? これまで抱えていた酒師を変えるとなれば、少し旨いだけではいけませんよ」
「前々から声は掛けているのですが、あまり手広く商売をする気はないのか、反応が鈍いのです。しかし本格的に動くとなれば、すぐにでも手配しなければ」