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鮮やかな青
第4章 激動の年
「年のわりにしっかりしていると思っていましたが、意外に可愛いところもあるじゃありませんか。では、拙者が隆元様に文を送るというのはいかがですかな?」
乃美殿の方が年上だとはいえ、可愛いなどと軽んじられるのは矜持が傷付く。しかし返す言葉もなく、私は頷くしかなかった。
「宴の準備を頼まれた拙者が、個人的に悩んだ末に書いたもの。ならば問題はありませんね?」
「……お願いします」
乃美殿に無用な負担を掛けるのは心苦しいが、せっかくの申し出だ。家の未来がかかる今、文句を言う余裕はない。
「それでは、さっそく文をしたためましょう。あの方は筆まめですから、すぐに返事が来るでしょう」
乃美殿は深い事情を知らない故、呑気な見通しを立てる。しかし本当に、返事は来るだろうか。私の家臣だからといって、無視されたりはしないだろうか。
不安がまた顔に出ていたのか、乃美殿は苦笑いを浮かべる。
「人間なんて、諍いがあって当然ですよ。それでも次に顔を合わせた時、懐かしく思うのが、兄弟というものじゃありませんか。ま、兄弟とて油断ならないのが今の世ですが、あなた方はそんな兄弟ではないと思いますよ」