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鮮やかな青
第4章 激動の年
集まる毛利の親族は、私の知るいつもの皆であった。父は延々と管を巻き、姉上は絡み酒で周囲を困らせ、元春兄上はちゃっかり面倒から逃げ出し、兄はそれを機嫌よく眺めていた。母上は数年前に亡くなってしまったが、きっと魂は共にあるだろう。この賑やかな宴席は、来年も再来年も、ずっと続くのだと信じたかった。
しかし、世が小さな団欒など許すはずもない。激動の時は、草萌ゆる緑が吹き荒び、麦の秋が過ぎ、彼岸花が赤く美しく乱れ咲く頃に動き始めた。
大寧寺の変。後にそう呼ばれるようになったその戦により、大内義隆は討たれた。彼に味方する者はほとんど存在せず、義隆はなすすべなくこの世を去った。
だが、大内義隆という男は強い男だった。それを討った陶隆房が、巨悪を滅ぼした英雄と呼ばれる事もなかった。主君へ向けた刃、権力の簒奪。それを望んで陶の下についた国衆達だが、揃って手のひらを返し揺れ始めていた。
大内家が持つ武力や領地を丸々簒奪し、自らが王となった男、陶隆房。義隆から拝領した隆の字を捨て、傀儡として用意した名目上の当主・晴英から一字を取って「晴賢(はるかた)」と改名した彼の旅立ちは、彼岸へ向かう一歩でもあった。