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鮮やかな青
第5章 月の影
 







 大内義隆にとって、陶隆房とは特別な存在だった。元々陶家は、大内家の重臣として富田若山城を居城としていた。そこで暮らす隆房に会いたいと、義隆は数時間も掛けて馬を走らせた事もあるそうだ。だが、いざ着けば隆房はすでに眠った後。義隆は隆房を起こしては可哀想だと、恋歌だけを枕元に残して帰ったそうだ。

 単なる欲の捌け口とは違う絆が、二人の間にはあったはずだ。私自身がそれを目にした事はないが、義隆の行動にはそれがよく現れていた。

 陶が、謀反を企んでいる。昨年の暮れには、既にそんな噂が溢れていた。しかし義隆はそれを耳にしても、全く取り合わなかったそうだ。

 そしていざ謀反を起こされた後も、なかなか信じようとしなかったらしい。包囲され火をかけられてようやく、義隆は追い詰められたのだと気付いたのだとか。

 私は、それを愚かだと考える。一度心を通じ合わせたからといって、何をしても許されると思えば大間違いだ。この世には、常に時が流れている。昨日慕った相手が、明日も慕ってくれるとは限らない。ましてや怠慢を諫言した結果冷遇された相手が、いつまでも味方のはずがない。
 
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