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タワーマンションの恋人
第2章 * 契約



「…相手のことは本気にさせて、自分は惚れるなって、ことですよね?」

ざっくばらんな、なんとも言えない簡素な契約書に目を通し、大森さんに聞けば、彼は頷いた。
本当は何冊もの冊子になってる契約書、時間短縮と言って一枚だけ机に出してくれた。

「きっと華さんのところには、色んな子が出入りする。全員に平等でいるためには誰にも惚れちゃダメなんですよ。」
冗談っぽく笑うけどきっと、本気。

「要するに、プロとして良識ある行動を。ってことですよね。」

「さすが華さん。やっぱりあなたは賢い人だ。」


そう言われて嫌な気はしなかったし、むしろ少し嬉しいくらいだった。

きっとわたしは賢くなんかない。
良識ある賢い人はそもそもこんな仕事を受けない。



抜けられない沼へ、わたしは足を踏み入れた。








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