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タワーマンションの恋人
第10章 * シュウタ




帽子を脱ぐと、髪を整えるように少しだけ頭を振る。

それだけの動きすら、絵になると思ってしまうほど、身のこなしが美しかった。




「シュウタ、さん?ですよね?」


年上の男の子に会うのは、このマンションに来てから初めてだったから、喋り方すら迷ってしまって、不安定な敬語で彼に尋ねた。



不思議そうな瞳で私をとらえると「うん、そう。そっちは?」と笑うでもなく、なんとも言えない表情のまま聞いてきた。


「華、です…。」


「華ちゃんね。了解。」


彼は荷物を置くとふらりと部屋を歩いて、もう一度わたしを見た。


「すごい大変じゃない?この仕事。なんでやってんの?」


オブラートに包むという手法を知らないのか単刀直入に疑問を投げかけてくる彼に動揺した。

やっぱり、視線はどこか不思議そうな目をしていて、笑ってるわけでも、不機嫌なわけでも無さそうで、なんだか掴みどころがないなぁ、なんて挫けそうになりながら、気持ちを整理してその質問に答える。



「なんでだろう…そういう運命だったんじゃないかな。もう仕方ない、みたいな…。」


彼の目を見ると「なにそれ」と少しだけ笑ってソファに腰掛けた。


「この仕事、きっと気持ち的に満たされてる時に持ちかけられてたら、引き受けてないですもん。」


「じゃ、心の隙間に入り込まれたんだ。…それもそういう運命だったってこと?」


その言葉に少し考えてから頷くと、彼は少し俯いて笑った。


「まぁ、嫌いじゃないけどね、俺。そう言う考え方する子。」



黒目が大きい人だと思った。
だから、目は物理的にキラキラと輝いているのに、どこか、死んでるような生気のなさも感じる。


その対照的なイメージを一気に抱かせる彼は、どこか不思議な魅力があった。






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