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タワーマンションの恋人
第15章 * 普通
「華ちゃーん!華ちゃん!」
「んー?どうしたの?」
キッチンからハルキの大きな声がして、顔を覗かせると嬉しそうに手招きをするから近づく。
「こんな感じでオッケー?」
「わー!上手ー!…でも、でっかくない?」
一緒に料理を作りたいと言ったのはハルキだった。
だから、リクエストのハンバーグの材料を買い揃え、こうしてふたりでキッチンに立っている。
「華ちゃん、細いから!たくさん食べてもらおうと思って?」なんて笑顔を向けられるとくすぐったいような暖かいような気持ちに包まれて、自然とわたしも笑顔になってしまう。
「あとは焼くだけ!」
「じゃあ、ハルキに任せるよ?わたしはサラダにとりかかります。」
「了解です!よろしくお願いしますっ!」と歯を見せて嬉しそうに笑う彼を見つめていると、ふと、幸せだなぁ。なんていう感情が湧いてくる。
慣れないキッチンを右往左往する彼の背中や横顔をこの目に、頭に、焼き付けたいなんて思ってしまう。
「華ちゃん、見過ぎじゃない?おれのことー。」
「んー?だってワタワタしてておもしろんだもーん。」
だけど、本当のことは言わない。
それは、なんだか言葉にすると自分が苦しくなってしまいそうな気がしたから。