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タワーマンションの恋人
第17章 * 家族
きれいめなワンピースを着て、少し大きめのハイブランドのカバンに荷物を詰めて、実家の玄関までやってきた。
連絡は入れてあるけど、なかなか中に入れず意を決してインターホンをならした。
しばらくして扉が開くとそこには母がいて。
「あら、ハナちゃん。あんまり綺麗だから!一瞬誰かと思っちゃったわ。」そう言って笑った。
「久しぶりです。」
なんだかただいま、とは言えずにそう告げると「なにそんな他人行儀に。おかえりなさい。」と言われて、きっと当たり前の事なのだろうけど、なんだかわたしは泣きそうになった。
「ただい、ま。」
そう言って入る実家に懐かしいとか、そんな感情は少しもなくて。
どれだけ、自分の中で無きものして来ようとしたのかが明白になった。
母はびっくりするくらいにこにこしていて、あたかも嬉しそうで、その様子に驚いた。
まさかわたしが帰ってきて嬉しいとか…?まさか。そんな考えが頭をめぐっては消えた。
「もうすぐ、ユウリ帰ってくるわよ。今日はハナちゃんが帰ってくるから寄り道しないで帰るって。」
笑って頷いて見せたけど、変な緊張感が貫いた。
やっぱり、ユウリは、妹は、わたしに両親を独り占めにはさせてくれないのだと。