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タワーマンションの恋人
第17章 * 家族
話は大体ユウリの話だった。
大学の話、友達の話、就活の話。
昔から話題を自分に向けるのが得意な子だったから、わたしはもっぱら聞き役だったなぁ、なんて。
だけど、今の仕事ではそれが活かされているから、感謝するべきなのかもしれない。
そんなとき、ユウリが「あっ!」とフリーズした。
視線の先にはテレビ、そしてそこには「あ…シオン、」彼の姿があった。
「シオンくんだぁー!かっこいいなぁ!」そんなユウリの言葉を聞いて、頭の中でいろんな感情を整理した。
だけど、ゆっくり口角が上がってしまう。
「ユウリ、シオンくんみたいな子が好きなの?」
「うん、だってちょーイケメンじゃない?」
そう言われて頷く。
だけと、ユウリは知らないよね。
シオン、近くで見るとテレビの中の100倍かっこいいんだよ?
そう思うと、ニヤける口角が収まらない。
ユウリはいつだってわたしの欲しいものを独り占めしていた。
それはもしかしたら不可抗力だったのかもしれないけど、わたしは羨ましくて仕方なかった。
だけど、わたしもう平気だ。
ユウリの持ってないもの、もう持ってる。
永遠に続くわけではないけど、わたしの心と身体にちゃんと刻み込まれて事実として残っていく。
もう、可哀想で寂しい華からは卒業しよう。