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タワーマンションの恋人
第20章 * Compatibility
なんとなく気持ちがすっきりしない落ち込みがちな時、シュウタくんに会うとなぜか気持ちがすっきりする。
ごちゃごちゃ考えていたこととか、全部無かったことにしてくれる。
全部どうでもよくなってしまうくらい、そのくらい、彼だけで満たしてくれる。頭の中も身体も。
いつも気がつけばほとんど無意識に彼を欲している、それはおそらく感情的なものというよりは、生理的な欲求に近い。
疲れてる時こそ、会いたくなる。
唯一、無心で縋り付いても倒れないで抱きとめてくれそうな精神的な心強さを彼に見出だせていたのかもしれない。
だから、すこし無理しても会いたかった。
喉が痛いわけでもない、風邪じゃない、疲れてるだけという自己判断。
部屋を綺麗にして、食事の下ごしらえをして、化粧をして、着替えて、完璧にして彼を待った。
洗面台の前で髪を仕上げていると、自分の顔が青白く見えてハッとした。
なんだか不健康そうに見えて急に自信がなくなる。
思えばこの仕事を始めてめっきり外気に当たることも減った。
良いのか、悪いのか、肌は気が付かないうちに更に白くなっていたらしい。
恐る恐る、口角を上げて鏡の前で笑ってみると、左頬に笑窪ができる。顎はツンと尖り、頬は程よく丸くなる。
大丈夫。
いつも通りの自分。
大丈夫。
そう呟いて、気合をいれるとインターホンがなった。