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タワーマンションの恋人
第23章 * double bind
初めて彼女と会った時の印象は、不思議な子。
雰囲気からして、ごく普通の、もしかしたら普通よりも恵まれた暮らしをして、愛されて何不自由なく育ってきた子なんだろうな、と思った。
それにそれ相応の美貌だ、街を歩けばそれなりに俺達側の業界からも声を掛けられただろうに…こんな部屋でこの子は何してんだろう。って単純に疑問だった。
世間知らずが騙されてこの部屋に居るんだろうくらいにしか思ってなかったのに、初めてあった日のその夜、呼吸をするように会話が弾んだのは、彼女の抱える心の影が思ったより深くて、見た目とは違って沢山いろんなことを背負ってこの部屋にたどり着く運命を歩いてきたと知ったからだった。
俺から仕掛けたはずが、まんまと彼女にはまっていてあの日の夜から俺は抜け出せずにいる。
彼女の張り詰めた心の糸がふっと緩む瞬間が見たくて、俺は彼女の元に足を運んでしまう。
自惚れかもしれないけど、必要とされてる気がして。