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タワーマンションの恋人
第23章 * double bind




「華、あんま無理すんなよ。」


「無理なんかしてないよ、シュウタくんにはわがまま聞いてもらってばっかりだし。」


小さな身体で健気に立ち回る彼女をそっと抱きしめた。


うまい言葉も浮かばなくて、しばらく抱きしめていると彼女の肩が震えていた。


「……昨日、シュウタくんの腕の中で死んじゃえばよかったかな…」



思いもよらない言葉にハッとして、顔を覗く。



「っ…ごめん、うそ、冗談っ!」

目を赤くして慌てて笑う彼女の涙を指ですくった。


「その冗談、全然笑えねぇよ。」


「…」


「華が死ぬなら俺も死ぬよ。」


「え?」


「俺にとって、お前そういう存在なんだよ。だから、そんなこと言うな。」


「……ご、めんなさい、」


「でも、どうしてもダメな時は、一緒に死んでやるよ。」



そう言うと驚いた顔をしたあとに、涙が一筋流れてそっと唇を重ねてきた。


「シュウタくんは…やっぱりすごいね、」


「そう?」


「もう少し頑張れそう。」


「そんな精神状態なのに、どうせ他のやつの前ではいつも通りの華ちゃんやってんだろ?壊れるよ、そのうちお前。」


「大丈夫、こうやってシュウタくんに甘えられるから。ほしい言葉をくれるし…。無理してるわたしを壊してくれるでしょ?」



そう言って笑った彼女が「次はいつ会える?」と少しの不安をのぞかせた顔で言うから頭をそっとなでて次の予定を確認した。


身を委ねられると、怖くなる。
力尽くでも俺のモノしたいという奥底のドロドロとした本能を抑えられなくなりそうで。



壊すだけでは利かなくなるときが来そうで怖くなるんだ。







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