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タワーマンションの恋人
第23章 * double bind
遠くの空が白く明けてきたころ、お互い目を覚まし、お互い困ったように笑ってまた唇を重ねた。
身支度を軽く整えると彼女は車を降りて行った。
夜景見た場所からは朝の澄んだ空気が遠くの街を包んでいた。
「なんか、変な感じ」
彼女が呟くから「なにが?」と聞き返せば嬉しそうにふふっと笑った。
「ハルキと外に居るなんて。」
「そうだね。」
きっとほとんどの人間が当たり前にしていることなのに、彼女はすごく嬉しそうで。
「また来よう?」
そう言って後ろから抱きしめると「大丈夫?人いない?!」と驚いた声をあげる。
「平気。昔はデートスポットだったみたいだけど、ここ、山道危ないし、真っ暗で怖いからあんま人来ないって。…まぁ、心霊スポット的な噂あるし?」
「…っへ?!え?今更そんなこという?!」
「だって夜言ったらもっと怖がるかなって思って」と笑えば「もう〜」と彼女も笑う。
「華ちゃん、行きたいところまた見つけたら教えてね。」
そう言うと彼女は振り向いてそっとキスをしてきた。
「叶えてくれるの?」
「うん。いつか、あのマンションから俺が連れだすから。そしたら全部叶えよう。」
俺の腕をぎゅっと抱きしめて「ありがとう、だいすき。」と呟いた。
彼女と見たこの景色も夜景も絶対に忘れないと心に決めたんだ。