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タワーマンションの恋人
第5章 * ハナ
少し早産だった妹は身体も小さく、弱かった。
大きな病気だったわけではないけれど、なにかと病気がちで既往歴も多かった。
気が気じゃなかった両親は妹に付きっきりのことが多い幼少期だった。
私といえば、健康に産んでもらい、なんの問題もなく成長した。
だから、妹が体調を崩すたび、わたしは親戚の家に預かってもらったり、お友達の家で見てもらうことが多かった。
どこのお宅にお邪魔しても、すごく良くしてもらったし、本当の娘のように接してくれたけど、やっぱり両親と一緒に居られない時間はどこか寂しくて。
妹の具合が悪いと、家族で遊びに行くことも出来なくて、気を遣ってくれた他の家族がわたしを一緒に遊びに連れて行ってくれることも多かった。
「ハナは本当に可愛いね。うちの子になるー?」
なんて言われるとそれはそれで嬉しかったけど、やっぱり本当の家族には敵わなかったし、出掛けられなくても良い、お利口にしてるから、家族と居たい。
それが本心だった。
「ユウリが具合悪いんだから、仕方ないでしょ」
そう言われてしまえば、もうなにも言い返せない、言い返したらいけないと子どもながらになんとなくわかっていた。
だから、せめて両親と一緒に居られる時は、怒られたり不機嫌になってほしくなくて我儘も言わないようにした。
ただ、必然的に両親と妹、一緒にいる時間が長い分、どこか、わたしの入りこめない空気があるような気がしていた。
それは、他のお宅にお邪魔しても一緒だったし、わたしはいつも宙ぶらりん。
わたしはどこの家の子どもなんだろう。どこが居場所なんだろう。
そんなことをいつも考えていた。
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