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タワーマンションの恋人
第2章 * 契約
「今日はもっと話をつめていきたくて。」
部屋にわたしを向かい入れた彼はそう言って笑った。
グラスに注がれたシャンパンを手渡され、カチンと重ねるとそっと口付ける。
「まだ、やるって決めたわけじゃ…。」
「わかってます、ただ僕は今日、華さんを落すつもりで来てますから。」
そう言って、詳しい話を始めた。
今、すでにこの仕事をしている女性が数名いると言うこと。
やはり、この仕事も人気商売と呼ばれるもの。
男の子たちが通ってくれなければ実質クビ。
だからこそ、擬似恋愛の要素が大切なんだ、と大森さんは言った。
「一番人気のある子はね、毎日誰かの相手をしている。毎日誰かの恋人なんだ。そうなると、収入も跳ね上がるんですよ。一日、10〜30万以上だと思って計算して下さい。秘密も守って貰わないといけないので、金額的にはこちらもそれなりに設定してます。」
そうなってくると、確かに今の店の5倍も嘘ではないのだろう。
「クラブや高級ソープで見ず知らずよオッサンなんかを相手にするより、よっぽど美しい仕事だと思いますよ。そしてお互いに夢が見れる。」
そう言って大森さんはタブレットを手渡してきた。
「今、この仕事をしてる女の子のリスト。フリックしていくと見れます。」
写真とプロフィールの画面が数人分見れるようになっていて、どの人も極端に美しく、可愛い。
「誰でも出来る仕事じゃない、ってことは理解してもらえました?」
なんて楽しそうに笑うと「華さんはこの中で一番になって欲しい。そして、うちのタレントたちを癒やして欲しい。」と言ってタブレットを取り上げた。
誰でも知ってるタレントの名前を次々に挙げて、
どの女性が担当してるか、具体的な説明も受けた。
そんな話をしていると、お酒の影響もあるのか、次第にわたしが持ちかけられている仕事は本当にすごい話のような気がしてきた。
なによりも「誰でも出来る仕事じゃない。」その特別感が、わたしの自尊心を刺激した。
なんとなく、夢も希望もなく、なあなあで生きてきた自分には手に余るほどの特別感。
「華さん、やりませんか?この仕事。」
「…わたしで、良いなら…やり、ます。」