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変質者の手毬唄・珍田一耕助シリーズ
第8章 「雷雨」
焦らせないように静かに凛を見つめていた珍田一だったが、そっと手を伸ばすと凛の手の甲に掌を重ねた
凛は大きな瞳を見開いて、少し驚いたような表情を珍田一に向けた
「凛さん…貴女が知りたいのなら、僕はきっと真相を明らかにします…。」
凛の手に重ねて置いた珍田一の手の甲に何かが触れた
いや…
触れたのではなかった
凛の大きな瞳から零れ落ちた涙だった
その涙は激しく打ち付ける外の雷雨とは対照的に、静かに降り注いだ
珍田一は凛の身体をそっと抱き寄せた
凛は抗うことなく、珍田一の胸に…父のシャツに顔を埋めた…
珍田一の胸には凛の吐き出す温かい息と涙が衣服を通して伝わってくる
10年もの長い間…誰にも訴える事の出来なかった凛の想いが、声にならない慟哭となって珍田一の胸に浸み込んできた…