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変質者の手毬唄・珍田一耕助シリーズ
第10章 「第2の犠牲者」
ぬかるんだ道を泥だらけになりながら歩いて帰ってきた磯毛に誘われて、珍田一は早めにひと風呂浴びていた
風呂から上がると、ひと雨降った後だけに暑さもいくらか和らいで過ごしやすくなっていた
山の方から吹き降りてくる木々の香りを含んだそよ風が風呂上がりの火照った身体には心地良く感じた
風呂上りに冷たい麦茶でも貰おうと、2人は食堂へ向かう
食堂では女将と勝江が小柳民吉の話をしていた
「あら、お二人ともお風呂に入ってらしたんですね?まだお帰りになってないのかと心配しておりましたのよ…」
「これは、すみませんでした。あの雨で足元がぬかるんでいたでしょう?警部なんて、そりゃあもう泥が跳ねて酷い有様だったので…」
「何か冷たいお飲み物でも用意しましょうか?」
「ありがとうございます、我々も冷たい飲み物にありつこうと思って食堂に来たところでして…」
「勝江ちゃん、麦茶をお出ししてあげて」
「は~い」
「お二人とも、泥で汚れたお召し物は後で私の所に持ってきて下さいね。」
「ありがとうございます、助かります」
そう言い残して女将は奥の厨房へ入っていった